重要な警告
債務整理を考え始めたその瞬間から、やってはいけない行為があります。これらを行うと手続きが困難になったり、最悪の場合は債務整理自体ができなくなる可能性があります。
なぜこれらの行為がNGなのか?
債務整理は法的な手続きであり、裁判所や債権者に対して「支払いができない状態」であることを証明し、減額や免除を求める制度です。そのため、以下のような行為は「支払い能力がある」「誠実でない」と判断され、手続きに重大な支障をきたします。
新たな借入・クレジットカードの利用
債務整理を検討し始めたら、新たな借入は絶対に避けるべきです。これには消費者金融からの借入、クレジットカードのキャッシング、ショッピング利用、友人からの借金も含まれます。
具体例
「来月の家賃が払えないから、とりあえずクレジットカードでキャッシングして...」→これは絶対にNG!新たな債務を作ることで、債務整理の妨げになります。
この行為による悪影響
- 詐欺的行為と見なされ、債務整理が認められない
- 自己破産では免責不許可事由にあたる
- 弁護士が受任を断る場合がある
- 債権者との交渉が困難になる
- 個人再生では再生計画が認可されない可能性
財産の隠匿・処分・名義変更
手続き前に財産を隠したり、家族名義に変更したり、安い価格で売却するなどの行為は重大な問題になります。預金の引き出しや現金化も含まれます。
具体例
「自動車を妻の名義に変更して残そう」「預金を現金にして隠しておこう」「ゴルフ会員権を友人に格安で譲ろう」→すべて財産隠しに該当します。
この行為による悪影響
- 詐欺破産罪で刑事告発される可能性
- 免責不許可事由に該当し、借金が残る
- 管財人による否認権行使で財産が回収される
- 手続き期間が大幅に延長される
- 弁護士費用が高額になる
偏頗弁済(特定の債権者だけへの返済)
複数の債権者がいる中で、特定の相手だけに返済を続けることを偏頗弁済といいます。「親戚だから」「職場の人だから」という理由での優先返済は禁止されています。
具体例
「親から借りた100万円だけは先に返しておこう」「会社の同僚に借金がバレると困るから、この分だけは返済しよう」→これらは偏頗弁済になります。
この行為による悪影響
- 他の債権者から不公平として手続きに反対される
- 返済した金額の回収(否認権行使)
- 個人再生では再生計画案が否決される
- 自己破産では免責が許可されない可能性
- 管財事件になり手続き費用が増加
虚偽の申告・書類の改ざん
債権額を少なく申告したり、収入を偽ったり、必要書類を改ざんすることは重大な問題です。「少しくらいなら」という軽い気持ちでも深刻な結果を招きます。
具体例
「借金額を50万円少なく申告した」「副業の収入を隠した」「通帳の記録を一部削除した」→すべて虚偽申告に該当します。
この行為による悪影響
- 手続きの最初からやり直し
- 弁護士からの信頼失墜と辞任の可能性
- 債権者からの厳しい追及
- 詐欺的行為として告発される可能性
- 他の金融機関での信用も失墜
ギャンブル・浪費の継続
債務整理を検討している期間中も、ギャンブルや明らかな浪費を続けることは手続きに悪影響を与えます。生活を改善する意思がないと判断されます。
具体例
「パチンコで大勝ちして借金を返そうとした」「まだクレジットカードが使えるから高級な食事を続けた」「競馬で一発逆転を狙った」
この行為による悪影響
- 免責不許可事由に該当する可能性
- 生活改善の意思なしと判断される
- 債権者から厳しく追及される
- 家計管理指導が厳格になる
- 手続き期間が延長される
正しい債務整理前の行動指針
では、債務整理を検討し始めたら、どのような行動を取るべきでしょうか。以下の正しいアプローチを実践してください。
推奨される正しい行動
1. 現状の正確な把握
すべての借入先、借入額、金利、毎月の返済額を正確にリストアップします。隠さず、偽らず、すべてを明確にしましょう。
2. 家計の見直しと節約
無駄な支出を削減し、生活費を最小限に抑えます。ただし、極端な節約で健康を害するようなことは避けてください。
3. 早期の専門家相談
弁護士や司法書士に早めに相談し、適切な債務整理方法と今後の行動について指導を受けます。
4. 必要書類の準備
給与明細、源泉徴収票、借用書、契約書など、手続きに必要な書類を整理・準備します。
5. 生活習慣の改善
ギャンブルや浪費をやめ、健全な金銭感覚を身につける努力を始めます。この改善姿勢が重要です。
債務整理成功への正しいタイムライン
理想的な手続きの流れ
借金問題の自覚(即日)
返済が困難と感じたら、即座に新たな借入を停止し、現状把握を開始する。
専門家への相談(1週間以内)
弁護士や司法書士に相談し、債務整理の方針を決定。受任通知の準備を行う。
受任通知送付(2週間以内)
弁護士から債権者に受任通知が送付され、督促が停止。返済も一時停止する。
債権調査・方針確定(1-3ヶ月)
正確な債務額を確定し、最適な債務整理方法を決定。必要書類を準備する。
手続き開始・完了(3-12ヶ月)
選択した債務整理方法に応じて手続きを進行し、借金問題の解決を図る。
専門家からの重要なアドバイス
弁護士からのメッセージ
債務整理は「借金を減らす」ための手続きですが、同時に「誠実に生活を立て直す」ことを約束する制度でもあります。小さな嘘や隠し事が大きな問題に発展することがあります。専門家には正直に、すべてを相談してください。
まとめ
債務整理前に避けるべき5つの行為について解説しました。重要なポイントをまとめると:
- 新たな借入は絶対NG:どんな理由があっても借金を増やさない
- 財産隠しは重罪:正直な財産申告が成功の鍵
- すべての債権者を平等に:偏頗弁済は避ける
- 正直な申告:小さな嘘も大きな問題になる
- 生活改善の意思表示:ギャンブル等はすぐに中止
これらを守ることで、債務整理の手続きがスムーズに進み、新しい生活への第一歩を踏み出すことができます。
今すぐ取るべき行動
すでに禁止行為をしてしまった場合
隠さずに専門家に相談してください。早期の対処により、問題を最小限に抑えられる場合があります。
これから債務整理を検討する場合
今すぐ新たな借入を停止し、専門家への相談を予約しましょう。早い行動が成功の鍵です。